昨今の運用型広告、とりわけダイナミック広告は運用調整だけで成果を上げるのは難しくなっており、「媒体特性を理解し、媒体が最大限効果を発揮できるように導く=媒体に正しく”学習させる”ことで効果を最大限にする」ことが求められています。
本記事では、「キャンペーン設計×タグ×データフィード」の視点から具体的なFacebookダイナミック広告の効果を高めるポイントや手法についてまとめてみたいと思います。
Facebookダイナミック広告の運用で重要なこと
Facebook広告、とりわけFacebookダイナミック広告において、広告運用者が意識すべきことは、できるだけプラットフォームの機械学習のアルゴリズムに寄り添うことです。
各プラットフォームにおける機械学習テクノロジーの進化は著しく、マンパワーで細かく調整するよりも、各プラットフォームのアルゴリズムに委ねた方が高い効果を実現できるケースが増えています。
当然のことですが、より多くの正しいデータをインプットすることで機械学習の精度、つまり広告効果は高まります。
そのため広告運用者は「できるだけプラットフォームの機械学習のアルゴリズムに寄り添う」という視点から、プラットフォームの知識を深めながら、機械学習を促進するための環境を作り、インプットデータ(=シグナル)を増していくことが重要です。
- 媒体の機械学習のアルゴリズムに委ねる
- 機械学習を促進させるための環境を作り、シグナルを増やす
機械学習を促進するためのポイント
では具体的に、Facebookダイナミック広告において、機械学習を促進するためにはどうすればいいのでしょうか?
そこでポイントなるのが、「キャンペーン設計/運用」、「データフィード運用」、「タグマネジメント」の3つをトータルで考えることです。
キャンペーン/広告運用(初期設定)
キャンペーン構成は極力シンプルに
キャンペーン構成を設定する際に、デバイス毎に広告セットを細分化したり、広告セット毎に日予算を設定したりしていませんか?これでは、最適化に必要とされる充分な学習データが集まりません。

Facebookの配信システムの機械学習が働き、広告の配信先として最適なユーザーを学習するには、広告セットあたりおよそ50件以上/週の最適化イベント(広告セットの最適化対象となるコンバージョン)が必要とされており、コンバージョン数が増えるほど、より適切に広告を配信できるようになることから、弊社では100件以上/週の最適化イベントを確保することを目安にしています。
そのためキャンペーンを構成する際は、広告目的にそった構成にすること、広告セットを細分化しすぎないようなるべく広告セットはまとめ、学習データを蓄積させることが重要です。(※最低限分割する必要がある場合は例外)

尚、100件/週の学習データが確保出来ない場合は、Facebookの広告配信システムが最適化を行うために必要な学習データを確保するために、マイクロコンバージョンやコンバージョンウィンドウを設定します。
マイクロコンバージョンとは、学習データ確保のために広告セットの最適化対象を最終コンバージョンの手前に設定する手法です。例えば、最終コンバージョンが「購入完了」の場合、マイクロコンバージョンを「カート投入」に設定し、100件/週の獲得を達成することでFacebook広告の最適化を促進させます。
また、コンバージョンウィンドウとは、ユーザーが広告にアクションしてからコンバージョンするまでの期間を指します。例えば、特に検討期間が長い商材やサービスでは、コンバージョンするまでの期間が長いキャンペーンに対し、コンバージョンウィンドウを長く設定することで獲得できるコンバージョン数を増やし、学習データを増やします。
ガイド: Facebook広告コンバージョンウィンドウについて知っておくべきこと | Facebook広告のヘルプセンター
予算設定と「キャンペーン予算最適化」
予算とは、利用者に広告を表示するために使用する金額で、予算によって広告セット(またはキャンペーン)全体の消化金額が決まります。
余裕ある予算設定をすることで、オークションで安定した入札を行えるばかりでなく、網羅的にデータ収集/活用を行え、機会学習の促進につながります。
また、予算設定では、「キャンペーン予算の最適化」の活用をお勧めします。
「キャンペーン予算の最適化」とは、予算の設定を各広告セットレベルで行うのではなく、キャンペーンレベルで予算設定し、予算のアロケーションを機械学習に委ねることでキャンペーンの効果を高めるしくみです。
キャンペーンの予算は最適な結果が得られるようリアルタイムで最適化され、パフォーマンスの最も高い広告セットに自動かつ継続的に配分することで、広告予算を効率的に消化し、広告効果を高められます。

「キャンペーン予算最適化」は2019年9月からデフォルト設定となります。現在は、既存のキャンペーンにおいても切り替えが可能ですので、早めの切り替えを検討してみてください。
- キャンペーン予算の最適化について | Facebook広告のヘルプセンター
- 新機能「キャンペーン予算の最適化」で効率的な予算配分を簡単に | Facebook Business
- キャンペーン予算の最適化の移行について | Facebook広告のヘルプセンター
- キャンペーン階層で予算を設定し、広告セットの全体的な成果を最大に
自動配置
Facebookダイナミック広告はFacebook(フィード、右側広告枠、Marketplace)、Instagram(フィード、ストーリーズ)、Audience Network(ネイティブ、バナー、インタースティシャル)、Messenger(ホーム)に配信できます。
Facebookでは、広告を掲載できる場所のことを「配置」と呼んでいます。使用する配置は、広告セットの作成の [配置] セクションで選択します。
広告に利用できる配置は手動で選択することもできますが、特段の理由がない場合、自動配置を選択することをおすすめします。
自動配置では、Facebookの配信システムにより、配置ごとの最小平均単価ではなく、全体の最小平均単価で最も多くの最適化イベントを獲得できるように、機会学習が働き広告の配信を最適化します。
Facebook、Instagram、オーディエンスネットワークと、パフォーマンスの良い配置に対し効率的に予算を消化されることで、全体の最小平均単価でより多くのCVを獲得でき、その結果、パフォーマンスの良い配置に対し、より多くの予算が動的に配分され、より多くの人に効率よくリーチできるようになります。
キャンペーン階層で予算を設定し、広告セットの全体的な成果を最大に
ターゲティング
FacebookはCookieではなく、人ベースのターゲティングが大きな特徴です。膨大なユーザーの行動データや様々なシグナルをもとに機械学習が働き最適化している為、人間が想定したターゲティングよりもはるかに高精度です。
Facebookでは、既存顧客から新規顧客の開拓まで以下のターゲット層にリーチできます。
主要なターゲットとなるオーディエンスにリーチ:コアオーディエンス
- 位置情報
- 利用者データ(年齢、性別、学歴、交際ステータス、役職など、趣味・関心など)
- 行動(購入行動、デバイスの利用状況など、さまざまなアクティビティ)
- つながり(Facebookページやイベントとのつながり)
既存顧客との関係強化
- 自社サイトへの訪問者(リターゲティング)
- 顧客リスト(CRMデータや顧客リストを利用)
- アプリの利用者
既存顧客に類似するユーザー層にリーチ(ブロードオーディエンス)
Facebookの配信システムでは膨大なシグナルをもとに顕在層だけでなく、潜在層に対しても高精度なターゲティングを実現できます。リターゲティングによる刈り取りだけでなく、フルファネルでの配信設計を検討してみてください。実際に弊社が運用している中で、ブロードオーディエンスの活用によりリタゲ以上に効果をあげているケースもあります。
求人メディア イーアイデムを運営するアイデム様の事例では、潜在層へは認知拡大目的の動画広告を、顕在層へは検索連動型広告や求人特化型検索広告を実施されていました。そんな中、その中間に当たる準顕在層へアプローチできる広告媒体がないという課題に対し、Facebook及びInstagramダイナミック広告の類似配信(ブロードオーディエンス)を導入されました。
その結果、新規UUは150%リフトアップ、CVは180%増、さらにInstagramのCPAも大幅に改善できました。
データフィード運用
Facebookダイナミック広告におけるデータフィードには大きく分けて二つの役割があります。
- 機械学習の促進
- クリエイティブ:商品情報そのものである広告クリエイティブのクオリティを高める
また、データフィードのクオリティによって、広告配信における効果も異なってきます。ここでは、データフィード活用を4つのステップにわけて説明します。

STEP①媒体の仕様に適合させる
まずは、媒体が指定する仕様にしっかりあわせたデータフィードを用意することが大原則です。例えば、必須項目が入っていない、既定の選択肢以外の値や不正な値、誤った情報が含まれているというケースでは媒体から承認されず、そもそも広告配信がされません。
Facebookダイナミック広告のデータフィードではまず、媒体のデータフィードの仕様にそって、必須項目を正しいデータ形式で埋めることが最低限必要な条件となります。

STEP②データフィード更新の自動化~最新情報の定期的な提供で鮮度を維持
データフィードは一度作成すればそれで終わりではありません。最新情報の定期的な提供でデータの鮮度を維持する必要があります。
データフィード更新自動化のしくみを取りいれることにより、媒体側へ効率的に最新の商品情報を提供できます。

STEP③任意項目(推奨項目)を埋めてフィードをリッチデータに
カタログ内の必須項目だけでなく、任意項目についてもできるだけデータを埋めて、より多くのインプットデータを媒体に提供することが機械学習を促し、媒体の最適化を後押しすることにつながります。
例えば、Facebookは性別が9割以上の精度で正確と言われています。特に推奨項目にある「gender」(性別)は、最適化を効かせやすい印象がありますので、しっかりフィードに用意してエンジンに学習させてください。


STEP④クリエイティブ調整
フィードのカラムの情報がクリエイティブに反映されますので、何をどうみせたいのか?訴求ポイントが効果的に表示されるよう、フィード情報をいかに効果的に表示させるかを考慮し、クリエイティブから逆算したフィードの設計が重要です。
データフィードの修正によるクリエイティブ調整で、さらにパフォーマンスを高められます。
データフィードによるクリエイティブ調整については別の記事で解説しておりますので、こちらも併せてご一読くださいませ。
タグマネジメント(Facebookピクセル)
WebサイトにFacebookピクセルを埋め込むことで、Facebook広告を見た人がその後に実行したアクション(例えば、購入や登録など)を、複数のデバイス(スマホ、タブレット、PC)を横断してトラッキングします。
Facebookピクセルを介して取得したトラッキングデータを基にキャンペーンの効果測定を行ったり(数値計測)、製品ページにアクセスしただけで購入に至らなかった人へ再度リーチする「リターゲティング」やWebサイトへの訪問者と類似する利用者を広告のターゲットとして設定する「類似オーディエンス」を利用して新しい顧客にリーチするといったオーディエンスの構築・ターゲティングが可能になります(カスタムオーディエンス)。
また、Facebookピクセルを介して取得したデータを基に機械学習が促進し、コンバージョン最適化、つまり広告主の望むアクションをとる可能性が高い人にリーチできるよう、広告を自動的に最適化することも可能となります(機械学習の促進)。
このようにFacebookピクセルは、機械学習のベースとなる多くのシグナルを媒体に提供することになりますので、正しく設置しましょう。

Pixelヘルバーというツールでは、正しくPixelが発火しているかを確認出来ます。
とても便利なツールですので、インストールをお勧めします。
hromeブラウザで自社のウェブサイトに移動し、アドレスバーの横に表示されているピクセルヘルパーアイコン</>をクリックするとページで見つかったピクセルやイベントと、そのピクセルやイベントが正常に読み込まれたかを知らせるポップアップが現れます。
自動詳細マッチング
自動詳細マッチングとは、チェックアウト、ログイン、登録の際、ウェブサイトでハッシュ化(※)された顧客データ(メールアドレスなど)を取得し、Facebookユーザーとを高い精度で照合することで、より多くのコンバージョンデータに基づいて広告を最適化できる機能です。
Facebookにログインしていない場合のコンバージョンでも、自動詳細マッチング機能を設定することにより計測可能となるため、コンバージョン数の増加やマッチ率の向上によるカスタムオーディエンスの規模拡大につなげられる機能です。
※ハッシュ化:セキュリティ保護のためにデータを変換する処理

さいごに
Facebookダイナミック広告の運用では、とりわけ「媒体に正しく”学習させる”ことで効果を最大限にする」ことが重要です。
そのためには、「キャンペーン/広告運用」×「データフィード運用」×「タグマネージメント」をトータルで運用することで効果を最大化していくことが、Facebookダイナミック広告の運用において必須といえるでしょう。