※2021年7月29日更新
直近のiOSアップデートにおいて、広告配信への大きな影響が予測されております。
具体的には、「広告配信ができない」「広告管理画面上からCV計測ができない」など、
ビジネスの売上や広告配信成果の評価に関わる所まで大きな影響があることが想定されます。
本記事では、Facebook広告において”対応しなくてはならないこと”をご紹介します。
iOS14.5のアップデートで起きていること
先日アップル社が発表したiOS14.5のアップデートにおきまして、下記の変化が出ることがFacebook社より案内されております。
- アプリが取得する情報を表示するプライバシーラベル義務化
すべてのアプリは、アプリのデータ取得に関する方針について、AppleのApp Store Connectを通じて提示する必要があります。 - トラッキングの透明性に関するオプトイン設定画面義務化
App Store で公開されているFacebookなどのアプリは、AppleのApp Traking Transparency(ATT、オプトイン設定画面)を通じて、サードパーティのアプリとウェブサイトにおけるトラッキングの許可を利用者に求める必要があります。 - アプリ/ブラウザのAPIを通じたトラッキング義務化
Facebookやその他のプラットフォームは、イベントのレポートを制限および合算し、遅延させるSKAdNetwork(SKAN)APIを導入する必要があります。
AppleのiOS 14リリースが広告やレポートに及ぼしうる影響 | Facebook Businessヘルプセンター
Facebook広告配信に与える影響
Facebook社が発表している影響については以下があげられています。
- iOS14ユーザーからのコンバージョンが正確に取得出来なくなり、統計モデルが使用される可能性があります。
- iOS14ユーザーのオーディエンス蓄積が出来なくなり、リターゲティングの精度が低下します。
- Facebook広告マネージャのアトリビューションウィンドウが変更となり、Click後28日までの計測が出来なくなります。
- Facebook広告マネージャのCV反映タイミングが変更されます。また、データ集計に遅延が生じる場合があります。
- 配信の内訳が取得できなくなります(年齢・性別・地域・配置面など)
- Facebookオーディエンスマネージャへの配信が出来なくなります。
- ピクセルにより取得できるイベント、カスタムコンバージョンはドメインごとに8種類に制限されます。
参考:AppleのiOS 14リリースが広告やレポートに及ぼしうる影響
コンバージョン計測やリターゲティングオーディエンスの縮小など広告配信の成果、アトリビューション期間の縮小や配信の内訳の確認など評価の部分で影響が想定されます。
本アップデートにより個人を特定できる情報に対する制限が大きくなるため、
登録している個人情報を基に広告配信しているFacebook広告は対策が必須となります。
iOSアップデート後に起きた変化
2021年6月29日現在、日本のAppleユーザーのうちiOS14.5へアップデートしたユーザーの割合は74%です。
アップデートしたユーザーのうち、約45%のユーザーはATT(App Tracking Transparency)を有効に設定しており徐々に影響が見られ始めています。
参考:https://www.appsflyer.com/jp/ios-14-att-dashboard/
Facebook広告において、変化が見られている内容についてまとめました。
リターゲティングオーディエンス数/媒体CV数の減少
Facebookが蓄積できるオーディエンス数が減少しているため、オーディエンスサイズの減少が見られております。
具体的には、リターゲティング対象のユーザー数が*12%程減少している例も見られており、徐々にデータ取得ができなくなってきていることが分かります。
*サイト来訪180日のユーザーで比較。
*比較期間は2021年4月と2021年6月のオーディエンス数で比較
また、媒体が計測できるCV数も減少しています。
具体的な影響度については前後比較が難しいものの、一部アカウントでは以下変化も見られるようになってきており、Facebookが計測できるCV数が減少していることが分かります。
これまで:第三者計測ツールCV数<媒体計測CV数
変化後:第三者計測ツールCV数>媒体計測CV数
Facebook広告が計測できるCV数の減少を防ぐために詳細マッチングの導入は1つの対策となります。
まだ未導入のアカウントがございましたら実装することを推奨します。
詳細マッチングは、Facebook広告を最適化して広告の効果を高めるための機能です。
詳細マッチングを使用すると、ハッシュ化されたカスタマー情報とピクセルイベントをFacebookに送信できるため、Facebookが計測できるCV数を増やして、リーチを拡大できるようになります。
参考:ウェブでの詳細マッチングについて
管理画面上からCV内訳が見れなくなるアップデート
2021年4月26日以降、管理画面上からCVしたユーザーの内訳が見れなくなっています。
内訳とは、年齢・性別・地域・配置面を指します。
表示回数、クリック数、配信金額などFacebookプラットフォーム上で完結する情報はこれまでと同様管理画面上から指標を確認できますが、LPに遷移した後のユーザーの行動を追うことが難しくなり、CVのデータは取得不可能になっています。
※2021年4月25日以前のCV内訳はこれまで通り確認が可能です。
▼内訳:年齢別データの管理画面の表示

コンバージョンウィンドウが廃止
コンバージョンウィンドウとは、ユーザーのFacebook広告表示後またはクリック後、CVまでの期間を計測する機能でした。
iOSアップデート後よりアトリビューションウィンドウという名前に変更され役割に変化が見られています。
これまで、コンバージョンウィンドウは①広告配信の最適化②期間ごとのCV数の変化の確認に活用されていました。
2021年4月26日以降は、①の最適化に用いられる期間が減少し、②期間ごとのCV数の変化を確認できなくなっています。
こちらのアップデートに関しても外部の計測ツールを活用したFacebook広告の評価を推奨します。
▼アップデート前サポートされていたコンバージョンウィンドウ
- クリックから1日間
- クリックから7日間
- クリックから28日間(デフォルト)
- クリックから1日間、または表示から1日間
- クリックから7日間、または表示から1日間
- クリックから28日間、または表示から1日間
▼アップデート後サポートされているアトリビューションウィンドウ
- クリックから1日間
- クリックから7日間(デフォルト)
- クリックから1日間、または表示から1日間
- クリックから7日間、または表示から1日間
Facebook広告における対策事項
Facebook社から案内されている対策が2点あります。(2021年3月3日時点)
- 1.ビジネスマネージャのドメイン認証
- 2.上限8種類までイベント数を選ぶ(合算イベント測定)
ビジネスマネージャのドメイン認証について
ビジネスマネージャのドメイン認証は、ドメインの所有者の確認によりコンテンツの安全性を確保するための機能です。
ドメイン認証をすることで、リンクとコンテンツの編集権限を管理して、ドメインの不正使用を防ぐこともできます。
ドメイン認証をすることはiOSアップデート以前は推奨の設定でした。一方、本アップデート後はドメイン認証を実施していないと2の合算イベント測定が実施できないため、広告を配信してもイベント/カスタムコンバージョンの計測ができなくなります。
そのため、ドメイン認証をすることはFacebook広告配信をする上で必ず実施していただきたい対応となります。
合算イベント測定について
ビジネスマネージャのドメイン設定が完了した後、合算イベントの測定を実施できます。
こちらは、Facebookピクセルが設置されているドメインごとに、イベント数/カスタムコンバージョン数が上限8種類に限定されるアップデートとなります。
ピクセル単位で8種類ではなく、ドメインごとに8種類のイベントに制限されることに注意が必要です。
例えば下図のように、1つのドメインに3種類のピクセルが設置されている状況を考えてみましょう。
自社のピクセルのイベントで5つ優先順位設定をした場合、残り2つのピクセルで3つのイベントしか計測ができなくなります。

本アップデートについてはFacebookダイナミック広告を運用している事業会社様には大きな影響となります。
Facebookの標準イベントだけで8種類以上のイベントがあり、カスタムコンバージョンも制限の対象となります。これまで9種類以上のイベントを設定していた場合は、今まで計測できていたイベントが取得できなくなる可能性が高いです。
そのため、8種類のイベント・カスタムコンバージョンを選定する上では慎重な判断が必要になります。
対策事項の設定方法
ここからはビジネスマネージャのドメイン認証と合算イベント計測の設定方法を紹介します。
ビジネスマネージャのドメイン認証について
1.ビジネス設定内「ブランドセーフティ>ドメイン」より認証したいドメインをビジネスマネージャに追加

2.ビジネスにリンクしたいドメインを選択

3.FacebookビジネスマネージャからDLできるファイルをウェブサイトのルートディレクタにアップロード
ビジネスマネージャに表示される手順通りに作業を進めてください。
アップロードできたらビジネスマネージャ上より認証するをクリックし確認ができれば、ドメイン認証は完了です。

上限8種類までイベント数を選ぶ(合算イベント測定)
1.イベントマネージャよりピクセルを選択
2.合算イベント測定を選択、ウェブイベントを設定

3.優先順位を設定したいドメインを選択し、イベントを編集をクリックします。

4.イベントを追加クリック後、8種類のイベント/カスタムコンバージョンを選択
選択後、送信をクリックすれば指定完了です。

アップデート情報(2021年6月16日時点)
一部仕様にアップデートがあったため記載をしております。
今後も随時アップデートがあること予測されるため、機能のアップデート情報は定期的に確認することを推奨します。
合算イベント測定、優先度変更後の広告停止期間の廃止
これまでは、合算イベント測定にて、既に設定しているイベントの優先度に変更を加えた場合、該当のイベントを使用している広告セットは72時間、配信が停止になる仕様でした。
しかし、2021年6月16日以降、合算イベント測定の優先度に変更を加えても、広告配信が停止されなくなりました。
※代わりに、優先度変更の使用回数制限が設けられるため、むやみな設定変更は推奨しません。
デフォルトのアトリビューション設定をアップデート
これまではコンバージョンの最適化には推定コンバージョンは含まれておりませんでした。
本アップデートより「クリックスルー7日間」のCVに推定コンバージョン数を含めるようアップデートされました。
計測できるコンバージョン数が減少しておりますが、推定コンバージョンを最適化対象に含めることでFacebookが学習に用いるデータが増え、機械学習の精度の向上が見込まれます。
最適化に設定できるイベント/カスタムコンバージョンの制限解除
これまでは合算イベント測定にて設定されているイベント/カスタムコンバージョンのみ広告セットの最適化対象に選べました。
本アップデート以降は、合算イベント測定にて優先順位付けされていないイベント/カスタムコンバージョンも最適化の対象にできるようになっています。
ただし、優先順位測定をしていないと、計測するイベント数が欠損している恐れがございます。
そのため、最適化に設定するイベント/カスタムコンバージョンは合算イベント測定にて、優先順位付けすることを推奨します。
まとめ
今回はiOSのアップデートによる影響と対策をまとめました。
本アップデートの対象はiOSユーザーのみとなりますが、
2023年にはChromeからCookieが排除されること事が発表されています。
※参照:サードパーティ Cookie 廃止に関するタイムラインの変更について
各媒体予測モデルによる機械学習の精度は向上してくることが想定されますが、
誰に何をクリエイティブを使って伝えるのかのコミュニケーション設計が重要になってきます。
ダイナミック広告においてはデータフィードのチューニングにより、商品のどんな情報をユーザーに届けるのかが成果最大化の鍵になってきます。
この記事が少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。