こんにちは。フィードフォースで広告運用コンサルタントをしている寒川です。

Web広告を配信している事業会社さんは、特に2020年のiOS14アップデート以降からは、いよいよCookie規制が本格化してきたな、という実感を持たれているのではないでしょうか。

ITP、Cookie規制(※)については、”いたちごっこ”の状態が続いており、Cookieに関する法律の規制レベルは国によって異なるなど、プライバシー保護とWeb広告を取り巻く環境の変化については今後も目が離せない状況です。

※Cookie …本記事では『3rd Party Cookie』を指します。
訪問したウェブサイトのドメインから直接発行されているCookieを「1st Party Cookie」と呼び、訪問しているウェブサイトのドメイン以外から発行されているCookieを「3rd Party Cookie」と呼びます。

これからも、随時アップデート情報をキャッチアップしつつ、その時々で今後の対応や広告設計を考えていくことになるでしょう。

本記事では、今後Web広告はどういう役割に変化していくのか、どのようなターゲティング設定で成果を出していけるのかについてまとめました。

今後また状況が変わる可能性はありますが、少しでも将来の設計のお役に立てたら嬉しいです。

Cookie規制とWeb広告

ダイレクトマーケティングの課題

Web広告を活用されているサイト、特にリターゲティング(サイト来訪したことがあるユーザーをターゲティングする)広告においては、近年顕著に成果の低下を感じているのではないでしょうか。

KPI(目標)をROASやCPAにおいたサイトでは、従来のKPI達成が厳しくなり、KPIに合わせた配信調整により、配信費を抑制。その結果CV数(目標到達数)がシュリンクし、サイトの計画値が未達になってしまうということにもなりかねません。

そこで、多くのサイトでとられた対策がダイレクトマーケティングです。多くの企業において、メルマガやLINE、Instagram、Twitterなどを通して、登録会員や、LINE公式アカウントの友だち、フォロワーへの直接的なコミュニケーションが活発になってきたかと思います。

ダイレクトマーケティングでは、広告のリターゲティングと同じく親和性の高いユーザーに直接メッセージを届けられます。

また、サイトの基幹データと照らし合わせて、購入回数や頻度などでユーザーセグメントを分け、配信する内容(キャンペーン施策)の出し分けもでき、パーソナライズされたメッセージの配信ができるというメリットもあります。

では、Web広告の代わりにダイレクトマーケティングに注力すればいいのか?というとそうではないように思います。

ダイレクトマーケティングは、いわば既存顧客へのコミュニケーションです。さらに、たとえ今は会員・友だち、フォロワーであっても年齢やライフスタイルの変化などから、ファンから離脱するユーザーも一定数存在します。

長期的なサイトの発展という観点からも、新しくサイトやアカウントを知ってもらう、商品やサービスに興味をもってもらう施策は必要不可欠です。

インフルエンサーマーケティングや他社とのコラボ、店舗との会員登録連携などで、会員登録者・フォロワーを増やす施策は他にもありますが、やはり広告のリーチ数の多さやコントロールのしやすさというのは、なかなか他に代替しにくいものではないでしょうか。

リターゲティング広告への影響

では、下記のように計測タグでユーザーのCookieを取得して、広告のリターゲティング配信をしていた広告は消滅するのでしょうか?

▽リターゲティングされていたセグメント例

  • サイト来訪
  • 商品詳細ページ閲覧
  • カート追加
  • 注文内容入力画面
  • 購入

端的に言ってしまうと、従来のようにユーザーや商品の特定はCookie規制のため精度は低く(将来的にはほぼできなく)なるでしょう。

そこで各媒体社が推奨しているのは、事業会社が保有しているユーザーのメールアドレスや電話番号などのファーストパーティーデータを使用したリターゲティングです。

あらかじめサイト内のプライバシーポリシーに取得したユーザーデータを広告配信に活用することを明示しユーザーの許諾を取っておく必要はありますが、それらのユーザー情報を媒体にセキュアにハッシュ化した情報としてアップロードし、そのカスタマーリストをターゲティング設定して配信する手法です。

ただし、今後よりセキュリティ・ポリシーは厳しくなっていくと想定されておりますので、しっかりとアップデートを確認し、サイト上への個人情報活用の明記などの対応が必要です。

ノンターゲティングの活用も

ノンターゲティング(※)の活用も検討してみてもいいでしょう。

保有しているユーザー情報の精度が高いFacebookやInstagramにおいて、ノンターゲティングで配信した場合、人間の頭でがっちりターゲティングしていた時よりも、成果がいいケースも出てきました。

それは、ターゲティングをしないことで配信時のインプレッション単価が安価になるだけでなく、Facebook・Instagram内でのユーザーの趣味・趣向を媒体のエンジンが学習し、興味関心があるであろうユーザーに配信している点も大きいです。

※ノンターゲティング:年齢や性別、興味関心、ターゲティングリストなど設定せずに配信する、ターゲティングを指定しない手法のこと

Cookieに頼らないターゲティング手法

当然、ノンターゲティングで対応できる部分は限られています。

Cookieを利用しないターゲティング手法を取り入れていく必要もあるでしょう。

いま注目しているCookieに頼らないターゲティング手法として、いくつか紹介していきたいと思います。

Facebook/Instagram

FacebookページやInstagramアカウントにアクションを起こした人

Meta社(旧Facebook社)のソースを使う方法です。

下図のように、自社のFacebookページやInstagramアカウントにアクションを起こした人を、様々なセグメントに分けて、オーディエンスの作成が可能です。
リテンション(オーディエンスを溜められる日数)も最長365日まで設定できます。

  • Facebook
Facebook広告カスタムオーディンス作成画面
  • Instagram
Instagramカスタムオーディンスを作成画面

【オーディエンス作成方法】
ビジネスマネージャー> オーディエンス> オーディエンスを作成> カスタムオーディエンス> Facebookページ or Instagramアカウントを選択> イベント、リテンションを選択、オーディエンス名などを記載> オーディエンスを作成を押下

Facebook/Instagramショッピングのソース活用

Facebook/Instagramショッピングを活用しているアカウントの場合、そのショッピングでのユーザーの動向をもとに、セグメントを分けてオーディエンスの作成が可能です。

下記のように、かなり細かく分類でき、リテンション(オーディエンスを溜められる日数)も最長365日まで設定可能です。

  • 商品を見た人
  • 商品を見てウェブサイトに移動人
  • 商品を保存した人
  • ショップページを見た人
  • ショップのコレクションを見た人
  • カートに商品を追加した人
  • 商品のチェックアウト(注文)を開始した人
  • いずれかの商品を購入した人
Facebook・Instagramページ
ショッピングカスタムオーディンスの作成画面

【オーディエンス作成方法】
ビジネスマネージャー> オーディエンス> オーディエンスを作成> カスタムオーディエンス> ショッピングを選択> イベント、リテンションを選択、オーディエンス名などを記載> オーディエンスを作成を押下

Twitter

キーワードターゲティング

自社の商品やサービス、関連語句などをターゲティングしておき、ユーザーがTwitter内の「検索」や「ツイート」に基づいて広告配信を行うターゲティング手法です。

これらも検索連動型に近い形で、ユーザーが”いま”知りたい情報や興味のある事柄に対して、最適なタイミングでリーチできます。

【オーディエンス作成方法】
キャンペーン作成後、広告グループの設定箇所でターゲティング機能の「キーワード」という箇所で入稿したいキーワードを入力

フォロワーターゲティング

ビジネスに関連性があるアカウントを指定して、そのアカウントをフォローしている人をターゲティングする手法です。

【オーディエンス作成方法】
キャンペーン作成後、広告グループの設定箇所でターゲティング機能の「フォロワーが似ているアカウント」という箇所でアカウントを入力&検索して設定

これらは、媒体社が保有しているユーザーデータに基づいてターゲティングできるため、Cookieに頼ることなく、ユーザーの行動や趣向を用いてターゲティングが可能です。

フルファネルマーケティング設計の見直しとWeb広告

Web広告の活用の仕方も、従来とは変わっていくのではないかと思っています。
前述している通り、Cookieを使った今までのリターゲティング手法は、規制によりターゲティング精度が低くなり、成果が落ちることは見えているでしょう。

その代わりとなる、顧客リストを活用したリターゲティングも、サイトによってはプライバシー・ポリシー上できなかったり、リストを用意するマーケティングorシステム担当者のリソース問題も浮かび上がってくるかもしれません。

そうすると、おのずとリターゲティングメインの予算配分ではなくなってくるのではないでしょうか。

これからは、既存顧客へのコミュニケーションはダイレクトマーケティングも活用しながら、やはりサイトや商品・サービスの認知はリーチ数も多くコントロールがしやすいWeb広告を中心に、設計していくようになると思います。

ダイレクトマーケティングができるユーザーの母数を増やすため、フォロワーや友だち獲得を目的とした広告配信手法も注目され始めています

個人的にはフォロワー・友だち獲得につながる有効な広告メニューやターゲティングについては、まだ試行錯誤が必要だなと思う部分はありますが、今後の動向にも注目したいです。

既存顧客だけへの配信・コミュニケーションだけでは、様々な理由からファンの減少が懸念され、サイトの将来的な発展は厳しくなっていく可能性があります。

今後Web広告は、新規ユーザーにサイトやアカウントを知ってもらう、商品やサービスに興味をもってもらうという部分においての役割が大きくなっていくのではないでしょうか?

さいごに

Cookieについては、常に様々なアップデートが発表され、情報についていくのが大変なうえに、どう対応していこうか決めるのも困難な状況だと思います。

ただ、着々とCookieの規制が厳しくなっていっている中で、少しでも思考の参考になれれば幸いです。

Feedmaticでは、広告運用の他にITP対策も考えたタグの設定などについても、ご支援しています。
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