広告運用をやる際に考えなければいけないことのひとつに「広告費と目標CPA」があります。

この2点を、どのようなロジックで決めるべきでしょうか?だいたいROAS300%出ていればいいから、顧客の平均購入単価の3分の1くらいで、、、という決め方をされるケースも結構多いと思います。

また、広告代理店の運用担当者は、お客様から伝えられた目標CPAと広告費を維持することに注力してしまい、「このくらい広告費を使って、これくらいのCPAを目指すべきです」と自信をもって提案できない方も意外と多いのではないでしょうか。

そこで今回は、この広告費とCPAの適正値を算出するうえでのひとつの考え方である「CVP分析」についてお伝えします

前提知識:「固定費」と「変動費」

収益(売上)から、かかったコスト(原価、販売費及び一般管理費)を引いて残った金額が企業の営業利益となります。

後者の「かかったコスト」には、「まったく製造、販売をしなくてもかかるコスト(月額の従業員のお給料、家賃、広告宣伝費など)」と、「製造、販売をすればするだけかかるコスト(材料費、従業員の時給など)」があります。

前者を「固定費」、後者を「変動費」といいます。

グラフにしてみるとこのような形となり、2つを合わせた金額を「総原価」といいます。

「固定費」と「変動費」

以下、話を単純化するために生産量と販売量はイコール(作れば作るだけ売れる)の前提で考えていきます。

CVP分析とは

CVPとは「Cost(原価)」「Volume(営業活動量)」「Profit(利益)」の頭文字をとったものです。

これらを変数として行うCVP分析は「利益を○○万円出すための目標販売数量、目標売上高の算出」「安全余裕度や安全余裕率(現在の売上高がどれくらい損益分岐点を上回っているか)の把握」などに役立てられる管理会計上の考え方です。

では概念を説明していきましょう。先ほどの図に、もう1本線を足したものがこちらです。

CVP分析

このオレンジ色の線は「売上高」を示しており、その角度(傾きの大きさ)が「平均の販売価格」となります。また、変動費の角度が「1つ売るごとにかかる変動費」となります。

分かりやすい例を挙げてみましょう。

例えばあなたが小規模のECサイトを運営しています。

顧客の平均購入単価が5,000円、サイトの運営費用(ドメイン代、サーバー代、人件費、家賃など)が毎月合計100万円、商品ひとつあたりの仕入れ、製造にかかる原価が1,500円だとします。

この場合、顧客の平均購入単価が販売価格、運営費用が固定費、仕入れと製造にかかる原価が変動費となります。

ここで質問です。
月間の販売数がゼロ、つまり何も稼働しなかったら、あなたはいくら損しますか?
仕入れと製造原価はかからないので、固定費分の100万円損します。

では、販売数が500個ではどうでしょうか。
売上高が500個×5,000円=2,500,000円、そこから固定費1,000,000円と変動費500個×1,500円=750,000円、合わせて1,750,000を引いて、750,000円の儲けとなります。

このように、販売数がゼロだと赤字、500個だと黒字ということは、その中間のどこかに、損も得もしない販売数がありますね。この販売数量を「損益分岐販売量」といい、売上高と総原価の交点を「損益分岐点」といいます

損益分岐点と損益分岐販売量

広告出稿はC・V・Pのそれぞれにどのような変化を与えるか

では、このサイトにおいて広告出稿を始めるケースを考えてみましょう。

今、広告なしでの成績が次のグラフの縦棒に位置する状態だとします。

広告と総原価および販売数量の変化

ここに広告を打つと、総原価および販売数量はどう動くでしょうか。
今回は広告費を固定費にカウントしてみることにします。

すると、次のようなグラフになります。

広告出稿とCVP

固定費として広告費が乗るので当然Costは上がります。さらに広告を打つことによる効果で販売量(Volume)も増えます。販売数が増えたので売上高は上昇(右上にスライド)しました。

しかし、ここで重要なのが「肝心の利益(Profit)がどう変化するか?」です。

広告出稿と利益(Profit)

このグラフはあくまで分かりやすく説明するためのイメージです。
それでは、先ほどの架空のECサイトを例に、もう一度定量的なシミュレーションをしてみることにしましょう。

まず、広告出稿前の状態を整理します。

広告出稿前のCVP

先ほどテキストで書いたものを表にまとめると、このように整理できます。

では、ここに「広告費20万円かけて、CPA2,000円で注文を獲得する場合」を考えてみましょう。

広告出稿とCVP

Bの固定費が20万円上がり、Dの販売数量も100件増えています。

さらに、広告にまつわる指標を下に書き足しました。重要なのは「利益増分」と「ROI」です。

今回の場合では、広告費20万円を投下して15万円の利益が出ました。投資回収率(ROI)の175%を高いと見るか、低いと見るかは人それぞれかもしれませんが、単月で175%返ってくるとなると投資としては良い数値だと思います。

では、この初動の勢いに乗って広告費を増加させてみることにしましょう。

広告費は20万円から50万円まで増やし、その代わりCPAは2,000円から3,000円程度まで上がることは許容するとします。すると、どのような数値変化になるでしょうか?

広告出稿とCVP

「D:販売数量」「E:売上高」は、左から右にかけて(つまり広告を打たない状態からどんどん増額するに連れて)伸びています。トップラインを伸ばすという点では広告費の増額は成功と言えそうです。

しかし利益増分に着目すると、広告費を20万円から50万円に上げると、利益が下がってしまいます。ROIも175%→116%まで下がっています。

利益を出す、という点に着目すると、広告費の増額は裏目に出てしまったようですね。

さらに言えば、広告費の増額に30万円投資するよりは、その分をなにかツールを導入して固定費を削減するアクションを取るなど、もっと”利回りの良い”使い道がありそうです。

結局、広告費と目標CPAはどういうポイントで決めるべきなのか

あらためて大事なポイントを整理しました。

平均販売価格、固定費と変動費の最新数値を把握する

この前提条件をふまえて損益分岐点や損益分岐販売量の測定を行います。

前提がズレると、その後の計算もすべてズレるため、肝になる平均販売価格、固定費と変動費は最新の数値を用意しましょう。

目標を再確認する

売上高の増加か?利益の最大化か?という大方針、および、目標とする利益増加額やROIを決めておきましょう。ここを決めないと、意思決定がブレる原因となります。

広告費をいくらにしたらCPAがいくらになりそうか?という勘所を掴んでおく

運用型広告では多くの場合、投下する広告費を上げればCPCが上がる→それに連動してCPAも上がるものです。

広告費20万円ではCPA2,000円で取れたのに、50万円に増やしたら3,000円まで上がる、などの事象は「あるある」です。

ここでポイントとなるのが、「広告費をいくらに増やしたら、CPAがいくらに上がるのか」という点をあらかじめ、ざっくりでも良いので把握することです。これは運用者の数字感覚、経験則による部分が大きいと思っており、腕の見せどころです。

広告費の増減という変数以外にも、他社が出稿を強めている状況だったり、季節ごとの需要の波といった変数もあるでしょう。それらも加味して、精緻に予測するのは難しいですが、ざっくりとした変動予測くらいは素早く判断できるのが理想です。

最後に

今回はCVP分析の初歩的な考えをお伝えしました。

実際はこのような単純なケースではなく、複雑な計算や変数の増減が絡むことがほとんであると思いますが、CVP分析の基本的な考えを知っておくことで適切な目標値を主体的に提案できるひとつの武器が手に入ります。

ご自身の携わるビジネスや、またはご自身の会社や事業など、この観点で情報を整理してみると新しい発見があるかもしれません。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。